強くあれ
〜もっと強い自分へ。挑み続ける北陸のstrongerたち。〜
vol.55トビタテ!で、カナダへ留学。
芸術を通して視野を広げたい。

商業科
情報処理コース3年

上田 歩

商業科
情報処理コース3年

上田 歩

PROFILE
明倫中学校出身。美術部在籍。3年次の夏休みを利用して、トビタテ!留学JAPAN「社会探究コース」(※)に参加。カナダのバンクーバーに1か月間滞在し、LGBTQについて学びを深めた。現在、芸術系の大学への進学を目指している。

※『トビタテ!留学JAPAN 社会探究コース』
文部科学省が主導する官民協働の海外留学支援制度。Society5.0やSDGsを踏まえ、世界・日本・地域が抱える社会課題を自分ごととして考え、自由な発想と創造力で課題解決や活性化、社会貢献につながる探究活動に取り組む留学プログラム。

—今回、トビタテに応募されたきっかけを教えてください。
そもそも海外に興味を持つようになったのは、美術部の顧問の先生から「上田は性格的に海外の大学とかいいんじゃないか」と言われたのがきっかけです。自分自身、大雑把で新しいもの好きなところがあり、人とは違う方法での表現を追求しているので、海外もいいなと思いました。それから少し時間が経って、学校の掲示板にあったトビタテのポスターに、自分の自由な形式で留学ができると書いてあって、すごくいいなと思い応募を決めました。

—トビタテの試験に向けた対策はどうされましたか。
トビタテは倍率が高く、どうしたら合格できるのか、SNSなどを使って過去にトビタテで留学した人と話をしてアドバイスをもらいました。北陸高校の先輩方にもトビタテの経験者がいらしたので、話を聞いたりしました。そこで、トビタテは留学の目的が明確でないと合格できないことを知り、明確性を持たせるためLGBTQを題材とした探究活動に取り組みました。

—LGBTQに関心を持たれた経緯と、探求活動について教えてください。
金沢21世紀美術館で開催されていた『フェミニズム/FEMINISM』という特別展を見たことから、LGBTQに関心を持つようになりました。トビタテでは、自分が将来、社会に貢献できるような取り組みが求められるので、実際にLGBTQの当事者の方とお会いして「今後、日本がどのようになったらLGBTQの人が生きやすくなるか」などについて話を聞かせていただきました。

—トビタテの面接に向けて、周囲のサポートはどうでしたか。
トビタテの面接は怖いと聞いていたので、英語の先生で特に厳しそうな人に面接の練習をしてもらいました(笑)。それから、プレゼンのまとめ方についても何度も教えてもらいました。実際行ってみたら、面接官はやさしい方々ばかりで、そんなに緊張することなく話ができました。

—家族の反響や、応援はどうでしたか。
最初に母に伝えたんですけど、母も留学を経験したことがあり、すごく興味を持ってくれました。また、奨学金で行けるのも良かったです。でも、父も母もはじめの頃は私が受かると思ってなかったので(苦笑)、「自分がしたいようにやってみればいい」っていう感じでした。

—合格後、1ヶ月間にわたり留学先で活動されたことを教えてください。
留学先は、LGBTQの先進国であり、治安もいいカナダのバンクーバーを選びました。現地でホームステイして語学学校に通い、LGBTQの方が集まる場所で当事者の方から話を聞いたりしました。8月にカナダで開かれる、プライドパレードというLGBTQの大きな祭典にも参加しました。

—現地での活動や人との交流はどうでしたか。
お話を聞く相手は現地の方もいたけれど、一番詳しくお話を聞いたのは日本人の方です。その人は、日本だと同性婚ができないからカナダで結婚された方でした。また、路上で繰り広げられるプライドパレードは本当にすごかったです。LGBTQの方はもちろん、パレードを見に来てる人たちもたくさん道にあふれていて、なかには際どい格好の人もいたけど(笑)、楽しかったです。

—活動をする中で、日本とカナダとの違いを感じましたか。
例えば、普段の暮らしでバスを降りる時とか、カナダの人は「ありがとう」と言葉にして伝えるんです。困っている人がいたら、ちゃんと言葉で呼びかけて助けるとか。日本だと言葉にはせず、見えないところで伝えるのがいいみたいな風潮がありますよね。日本とカナダの表現の違いを感じるとともに、逆に日本の良さも改めて感じました。

—留学中に、大変だったことは何ですか。
人よりできない英語力のまま留学したので、最初は言葉が伝わらないという壁がつらかったです。でも、私のいたバンクーバーのリッチモンドは比較的アジア系の人が集まるエリアで、「留学生は英語がうまくしゃべれなくて当たり前」という感じで、みんなすごくよく話を聞いてくれる環境でした。私も英語がわからなくてもジェスチャーで表現して伝えるようにしていきました。

—バンクーバーでの生活について教えてください。
ホームステイ先には他にも日本人の留学生が2人いて、留学生同士でシェアハウスしているみたいな雰囲気でした。年上の女性の方で、お姉さんみたいな感覚でした。現地では外国人の友達もでき、みんなでプライドパレードに出かけました。

—今回の留学で、一番印象的だったことはなんですか。
印象的だったことのひとつは、アートがすごく身近にあったことです。日本だとお金を払ってアートを見るという感じがあると思うんですけど、カナダでは商店街のお店やストリートなど、本当に至るところで身近にアートがあふれていました。

—トビタテの経験を、今後どのように生かしていきたいですか。
今、芸術系の大学への進学を志望しているのですが、自分は芸術だからできることがあると思っています。LGBTQをはじめ日本にあるさまざまな支援団体などと協力して、アートを通してその問題に対する視野を広げていけたらいいなと思っています。

—トビタテを経験して、自分が成長したところを教えてください。
留学中、1ヶ月間、家族と毎日テレビ電話をしていたんですが、英語を話す時にジェスチャーをするのがクセになっていって、家族から「手や体がよく動くようになったね」って言われてビックリしました(笑)。あと、帰国後、電話をしながら家族と買い物をしていた時、「めっちゃ流暢に英語をしゃべれるようになったね」と言われたときはうれしかったです。

—北陸高校の美術部に入部した理由を教えてください。
実は中学ではバスケットボール部で、その先輩方が北陸高校に多く進学していて、私も北陸高校に行きたいと思い進学しました。でも、北陸高校には女子バスケットボール部がなかったのと、もともと子どもの頃から絵を描くことが好きで、中学3年生頃に『ブルーピリオド』という美大を目指すマンガを読んで、私も美大に行きたいと思うようになっていたので美術部に入部しました。

—北陸高校の美術部について教えてください。
先生は全員アーティストや美術作家の方なので、プロから学ぶことができます。また、部内には北陸中学校の生徒もいて、美術の先生になりたい人にとっては絵を指導する模擬練習みたいなこともできる、すごくいい環境だと思います。それから、油絵の道具などを全部提供してくれるところも、他校にはないところかなと思います。

—上田さんは、どんな作品をつくられているのですか。
最初の頃は油絵を中心にやっていたんですが、私は新しいもの好きなので、いろんなところを寄り道しながら創作する中で、次第にダンボールを使った作品をつくるようになりました。ダンボールをちぎった時にできる波々がすごく好きで、そこに色を塗ってキャンバスに貼り付けていく感じです。でも、新しいもの好きだから、これからも作風は変わっていくと思います。

—クラスの雰囲気や、友達、先生との交流はどうですか。
クラスの雰囲気は、賑やかというかうるさいです(笑)。商業科はクラス替えがないので、クラスメイトは家族よりもずっと長くいる人たち。休日もクラスの友達と遊んだりしています。

—芸術系の大学への進学を目指されているそうですが、対策はどうですか。
今の時点では美大受験の専門的な勉強をしていないので、今回の受験は自分の実力を見るためと考えています。来年度から、東京の美術系の予備校に通って、しっかり学んでいきたいです。

—将来の夢や目標について教えてください。
いろんな国を廻りながら、常に新しい知識をつけて絵を描いていきたいです。また、描くだけではなく、人々に伝えたり知らせたりするための活動もしていけたらと思います。最終的には、自分のギャラリーを開き、人との距離が近くなるような場所をつくれたらいいなと考えています。

—3年間を通して感じた、北陸高校の魅力を教えてください。
生徒数が多いマンモス校なので、入学した頃は、先生が生徒ひとり一人を見てくれるのかなって考えていたんですけど、そんなことは全然なくて、先生方の熱心さを感じました。それに、学校がきれいで過ごしやすいし、なにより学食が美味しいです(笑)。

—最後に、未来の後輩にメッセージをお願いします。
人が多いからこそ、バスケやダンスなどいろんな分野で活躍するすごい人たちがたくさんいます。将来的にも活躍するような人たちがこれだけ身近に集まっている場所は、すごく珍しいのかなと思います。学校の雰囲気も明るくて、自分自身も成長できる環境です。

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