強くあれ
〜もっと強い自分へ。挑み続ける北陸のstrongerたち。〜
vol.53紙作りの研究も部活動も、
失敗を恐れずやってみる。

普通科
普通コース3年

五十嵐 優翔

普通科
普通コース3年

五十嵐 優翔

PROFILE
南越中学校出身。男子バレーボール部所属。小学生の頃から、家業である五十嵐製紙の工房で紙に関する自由研究を続け、廃棄食物を漉き込んだ紙文具ブランド「FOOD PAPER」開発のヒントとなった。遠距離通学をしながら、文武両道を貫いている。

—廃棄野菜などから作る「FOOD PAPER」は、五十嵐さんの自由研究がきっかけでできたそうですね。
はい。小学4年生から5年間続けていた、食べものから紙を作る「紙漉き実験」の自由研究が生かされています。研究のきっかけは、テレビでバナナペーパーを取り上げていたのを見たことです。家が創業100年を超える越前和紙の工房で、母が越前和紙の伝統工芸士をしているので、自分でもできるんじゃないかと思いました。

—食べものから紙を作るのは、実際にやってみてどうでしたか。
親から食べものを紙の材料にするための突き方とかを教えてもらいながら実験していって、けっきょく30種類ほどの野菜や果物で紙を作りました。紙作りの原料をただ食べものに変えただけなんですけど、畑で採れる野菜とか、父のお酒のつまみのピーナッツとか、けっこうなんでも家にあるものを材料にしてできるので、「これも紙にできるんだ」と驚いたことは今でも覚えてます。

—食べものの紙づくりで大変だったことと、楽しかったことを教えてください。
最初は乾式で紙を作って、2年目は顕微鏡で紙を見たり、3年目に耐久力を調べたりとかしていきました。紙づくりは成功したものと失敗したものがあって、葉っぱ系は紙にならなかったのが一番印象に残ってます。他にも、テレビで見たバナナは自分で紙にしてみたら黒くなってしまったり、量を変えるだけでまったく違う感じになったりとか、漉く度におもしろい紙ができて楽しかったですね。

—そうした実験の軌跡が、「FOOD PAPER」開発につながったのですね。
今は、母が僕の研究成果を受け継いで、「FOOD PAPER」の紙を漉いてくれています。和紙は植物からできているんですけど、最近、和紙の代表的な原料となる楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの収穫量が激減したり、和紙づくりに不可欠なトロロアオイの農家さんが生産をやめたりして、和紙産地が存続の危機に迫られているんです。産地維持のための取り組みとして、野菜や果物の廃棄物を使った「FOOD PAPER」は自然環境にもやさしく、注目を集めているようです。

—子どもの頃から、工房で紙作りを見ることは多かったのですか。
そうですね、子供の時から工房で宿題をしたり、お手伝いをしたりしてました。自分から紙漉きをやってみようっていうより、工房で親から「これやっていいよ」ってたまに言われたことをやることがあって、バイトみたいな感じで紙漉きのお手伝いをしてましたね(笑)。

—福井県の伝統工芸品である越前和紙に対する思いを教えてください。
伝統工芸品自体があまり人気がなくなってきているけれど、越前和紙は1500年という長い歴史があり、そういうものはなくしちゃいけないと思っていて、これからも越前和紙の産地として続けていけるようにしたいです。

—「FOOD PAPER」開発の経緯もありますし、将来は和紙づくりを継承されるのですか。
「FOOD PAPER」関連のいろんな取材で、それについてよく聞かれます。「今は部活動が忙しくて、紙漉き実験もやってないんです」って答えると、皆さん「そうなんだ〜」ってちょっとがっかりされます(苦笑)。紙漉き職人になるには2年はかかるといわれていて、僕が大学で家を出るのと入れ替わりに兄が帰ってくる予定です。進路については、大学に入ってから考えようと思っています。

—これから新しい紙づくりをされる予定はありますか。
多分、家の方針としては、今までの商品に「FOOD PAPER」をプラスしてやっていく感じだと思います。自分としては時間があったらですが、「食べられる紙」にちょっと関心があります。もし災害が起きた時に、非常食として紙を食べられたら、それで命が助かることがあるかもしれないなと思っています。

—そもそも北陸高校に入った理由を教えてください。
年の離れた兄と姉がいて、どちらも北陸高校に通っていたので、自分も自然と昔から北陸高校に行くものだと思っていました。ただ、地元の中学は生徒数が少なく全員と顔馴染みなところだったので、ものすごく生徒数が多い北陸高校に入って、極端に世界が変わり、最初は戸惑いました。

—男子バレーボール部に入部されたきっかけを教えてください。
兄がバレーボールをやっていて、自分もやってみたいと思っていたので入部しました。それと、とにかく人が多すぎてどうしていいのかわからないところがあり、バレーボール部に入り部活動を通してコミュニケーションをとっていくようにしたところもあります。

—実際に入部されて、どうでしたか。
高校から本格的にバレーボールを始めて、先月の大会で引退しました。楽しいけどきつかったです(苦笑)。でも冷暖房や設備がしっかりしていて、すごくやりやすい環境でした。練習は月曜日だけ休みで、あとは毎日3時間プラス自主練1時間で、30分ほどトレーニングセンターで筋トレもしていました。練習では細かいところを丁寧に意識して取り組むようにしていました。

—勉強と部活動の両立は、どのように取り組んでいますか。
学校まで片道1時間位かかって、家に帰ると夜9時頃になるので、勉強は授業に集中してやるという感じです。テスト期間は、家に帰って1人で勉強する方で、先生に質問したりとかっていうのもあんまりないですね。

—クラスメイトや先生との関係はどうですか。
1年生からずっと同じクラスで、みんなとても仲が良いです。電車の中でゲームやアニメを見たり、ゲームはみんなでやるやつもあります。先生とはけっこう普通になんでも話せる感じです。

—あなたが感じる北陸高校の魅力を教えてください。
生徒数が多いので、クラスだけじゃなく部活動でも、いろんな関わりを持つことができます。小さい学校だと知ってる人だけになることもあるけど、まったく知らない人とおしゃべりをして、どんどんつながりが広がっていくのがいいなと思います。

—大学の進路と志望理由、その先の将来の夢について聞かせてください。
社会系の学問が好きで、姉が法学部だったこともあり、都会の大学で法学か政治学を学びたいと思っています。将来の仕事はまだ何も考えてないのですが、仕事ができるとかよりも、やっぱり人間としていろんな人に優しくできて、当たり前のことを当たり前にできる人になりたいです。

—これから入学を考えている未来の後輩にメッセージをお願いします。
自分から行動するのが一番大切だと思います。顧問の先生も「失敗してもいいから、まずはやってみろ」と、ずっと言ってくれています。これは紙作りも部活動も同じで、高校で新しい環境になると思うんですけど、くよくよしたりせず、失敗を恐れずに、まずはやってみることを大事にしてください。

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